tokyokidの書評・論評・日記

tokyokid の書評・論評・日記などの記事を、主題に対する主観を明らかにしつつ、奥行きに富んだ内容のブログにしたい。

2007-01-01から1年間の記事一覧

書評・新聞社

書評・★新聞社(河内孝著)新潮新書【あらすじ】 副題に「破綻したビジネスモデル」とある。内容は膨大な販売経費を注ぎ込んで保持されている「世界に冠たる」宅配制度のおかげで、いまはまだ日本の家庭に日々配達される新聞の(近い?)将来に於ける危機存…

書評・ある通商国家の興亡

書評・★ある通商国家の興亡(森本哲郎著)PHP研究所【あらすじ】 本書には副題として「カルタゴの遺書」とある。いまから2千数百年ほど前の北アフリカの、ちょうど現在のチュニジアのあたりに「カルタゴ」という国があった。この国は当時「通商国家」として…

書評・邪馬台国・清張通史1

書評・★邪馬台国・清張通史1(松本清張著)講談社文庫【あらすじ】 本書評でもさきに紹介したいわゆる「魏志の倭人伝」をもとにした、松本清張独自の史観を盛り込んだ「邪馬台国」の分析。推理作家としても名を馳せた松本清張らしく、随所に邪馬台国の謎に…

書評・日出づる国の「奴隷野球」

書評・★日出づる国の「奴隷野球」(ロバート・ホワイティング著・松井みどり訳)文芸春秋社【あらすじ】 副題に「憎まれた代理人・団野村の闘い」とあり、アメリカ人著者が、日本の野球には「奴隷制度」が残っている、と指摘した本である。同時に著者は「日…

書評・交換日記

書評・★交換日記(平成十九年《二〇〇七》睦月)【前口上】 君子の交わりは淡きこと水の如し。先人はこのように言っていたと記憶する。古稀を過ぎた評者は、先輩に当る方を友人として遠方に持っていて、君子の交わりをお願いしている。現代は電子メールとい…

書評・英米法概説

書評・★英米法概説(田中和夫著)有斐閣【あらすじ】 本書は題名通り「英米法」の概説書である。評者が住むアメリカは当然「英米法」の国であり、日本人である評者の「日本の法律」は、明治維新以来ずっと「大陸法」できているはずだ(このことについて最近…

書評・海軍主計大尉小泉信吉

書評・★海軍主計大尉小泉信吉(小泉信三著)文春文庫【あらすじ】 主人公の小泉信吉は慶応義塾大学を卒業して、三菱銀行に4個月勤務したあと海軍軍人となって1年2個月、父母と祖母と妹2人を残して戦死、と本書の冒頭にある。戦死公報によれば、昭和十七…

書評・アメリカ人民の歴史(上・下)

書評・★アメリカ人民の歴史(上・下)(レオ・ヒューバーマン著、小林良正・雪山慶正共訳)岩波新書【あらすじ】 アメリカの歴史を、それまでの歴史書の多くとは視点を変えて書いた本が本書なのである。上巻の冒頭「日本版への序文」のなかで、ほかの歴史書と…

書評・理科系の作文技術

書評・★理科系の作文技術(木下是雄著)中公新書【あらすじ】 本来この本は、自身物理学者であるところの著者が、(本来それほど頻繁に文章を書く習慣のない)理科系の人が必要にせまられて文章を書く際の注意事項をまとめたものと思われる。著者は東京大学…

書評・鉄道旅行のたのしみ

書評・★鉄道旅行のたのしみ(宮脇俊三著)集英社文庫【あらすじ】 子どもはだれでも電車や列車などの鉄道乗物が好きだ。大人になっても鉄道が好き、という人も多いだろう。本書は連載された記事をまとめたもので、前半の「鉄道旅行のたのしみ」は昭和五六年…

書評・ボクラ少国民と戦争応援歌

書評・★ボクラ少国民と戦争応援歌(山中恒著)朝日文庫【あらすじ】 山本有三の詩に「心に太陽を持て」というのがある。「唇に歌を持て」と続く。読んだ文章をたやすく忘れてしまうことがあっても、人はいちど覚えた歌をそう簡単に忘れはしない。とくに子ど…

書評・てんとう虫が走った日

書評・★てんとう虫が走った日(桂木洋二著)グランプリ出版【あらすじ】 本書には「スバル360開発物語」の副題がつく。昭和三十三年(一九五八)五月に発売され、昭和四五年(一九七〇)五月に累計三十三万台余りの生産・販売が終了した「往年の名車・ス…

書評・アメリカの心

書評・★アメリカの心(ユナイテッド・テクノロジーズ社新聞広告、岡田芳郎、楓セビル、田中洋共訳)学生社【あらすじ】 本書は一九八〇年(昭和五五)前後に、アメリカの製造業者ユナイテッド・テクノロジーズ社(以下UT社)が、経済紙のウォール・ストリー…

書評・明治の東京生活

書評・★明治の東京生活(小林重喜著)角川選書【あらすじ】 副題には「女性の書いた明治の日記」とあり、また「明治のサラリーマンの家庭の日常」ともある。後世からみて、昔の世のこまごまとした日常生活は、なかなか記録に残りにくいので、日本人の記録好…

書評。誰か「戦前」を知らないか

書評・★誰か「戦前」を知らないか(山本夏彦著)文春新書【あらすじ】 日本で「戦前」といえば、第二次世界大戦(太平洋戦争)以前のことである。日本が真珠湾攻撃で対米戦争の口火を切ったのが昭和十六年(一九四一)十二月八日、日本国を全面的に焼け野原に…

書評・マリリン・ノーマ・ジーン

書評・★マリリン・ノーマ・ジーン(グロリア・スタイネム著)ニューアメリカンライブラリー社刊ペーパーバック/邦訳・「マリリン」グロリア・スタイネム著、道下匡子訳、草思社刊【あらすじ】 昭和生れが一億人を割った平成十九年の現在でも、死んでから半世…

書評・アーロン収容所

書評・★アーロン収容所(会田雄次著)中公文庫【あらすじ】 著者の会田雄次は一九一六(大正五年)生れ、一九九七(平成九年)没。京都帝国大学史学科卒業。京都大学教授であった。昭和十八年に応召、ビルマ戦線に参加し、英軍の捕虜となって、敗戦後約二年…

書評・山本五十六(上・下)

書評・★山本五十六(上・下)(阿川弘之著)新潮文庫【あらすじ】 山本五十六は、昭和十六年(一九四一)十二月八日、日本がアメリカと開戦した当日の日本海軍・連合艦隊司令長官であった。当時大将で、ほどなく戦死して元帥となり、国葬で見送られた「日本…

書評・鼠

書評・★鼠(城山三郎著)文春文庫【あらすじ】 全盛期の大正八・九年(一九一九・二〇)にかけて、三井・三菱と並ぶ大商社に成り上がった鈴木商店(本社・神戸)の実質上の支配者であった大番頭・金子直吉を中心とした鈴木商店の物語・ノンフィクション。金…

書評・銃と十字架

書評・★銃と十字架(遠藤周作著)中公文庫【あらすじ】 本書は戦国時代に、いまの大分県・国東(くにさき)半島で、キリスト教イエズス会の教会信徒つまり切支丹の子として生れた「ベドロ岐部」の物語である。当時新設されたばかりのイエズス会経営の有馬神…

書評・肩書きのない名刺

書評・★肩書きのない名詞(三国一朗著)中公文庫【あらすじ】 著者の三国一朗(大正十年・一九二一〜平成十二年・二〇〇〇)は名古屋市生れ、ラジオ・テレビの司会者として有名であるが、エッセイストとしても名を成した。この「肩書きのない名刺」は一九八…

書評・魏志倭人伝

書評・★魏志倭人伝(石原道博編訳)岩波文庫【あらすじ】 底本にした岩波文庫のこの本の正式の題名は「新訂・魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝」といい、シリーズ名として「中国正史日本伝(1)」と記されてある。一九五一(昭和二六)年十…

書評・日本人とユダヤ人

書評・★日本人とユダヤ人(イザヤ・ペンダサン著)角川文庫【あらすじ】 匿名の「イザヤ・ペンダサン」氏が書いた、他に優れた日本の文化評論である本書は、本稿の底本とした角川文庫では昭和46年(一九七一)9月30日初版発行、とある。それは敗戦から四半…

書評・論語

書評・★論語(金谷治訳注)岩波文庫【あらすじ】 「論語」はいうまでもなく中国の春秋時代の思想家・孔子(B.C.五五一~B.C.四七九)の死後、弟子たちがその言行を集録した書。孔子は「礼楽の治」を以って徳治主義を実現しようとした人。日常の生活では「老人…

書評・三屋清左衛門残日録

書評・★三屋清左衛門残日録(藤沢周平著)文春文庫【あらすじ】 時代小説を多く残した著者の藤沢周平が、この小説の主人公であるところの、前藩主の側用人を務めたことのある三屋清左衛門が隠居して家督を息子に譲ったあとの物語を「日残りて昏るるに未だ遠…

書評・朝日新聞の用語の手引

書評・★朝日新聞の用語の手引(朝日新聞社用語幹事編)朝日新聞社【あらすじ】 朝日新聞社が記者のために「分かりやすく正確な文章を書くために」つくったマニュアルの「表記の基準」に「用字用語」「外来語」「外国地名」「その他の資料」などを加味した文…

書評・日本の「死」

書評・★日本の「死」(中西輝政著)文芸春秋社【あらすじ】 政治学者の著者・中西輝政氏が平成十五年(二〇〇三)に書き下ろした表題の本。「日本は死ぬだろう。いや、すでに死んでいるといっていい」から始まる「まえがき」と、目次から項目を紹介すると、 …

書評・国家の品格

書評・★国家の品格(藤原正彦著)新潮新書【あらすじ】 本書は、数学者である著者の2回にわたる講演記録に手を入れて一冊の本にした、と冒頭の「はじめに」の項に明記してある。本書の目次を紹介すると、 第一章・近代的合理精神の限界 第二章・「論理」だ…

書評・「南京事件」の探究

書評・★「南京事件」の探究(北村稔著)文春新書【あらすじ】 昭和12年(1937)に始まった日中戦争(支那事変)で、同年末日本軍は当時蒋介石率いるところの国民政府の首府・南京を占領する。以後戦後すぐ開かれた東京裁判そのほか戦勝国が戦敗国・日本を裁…

書評・ある明治人の記録

書評・★ある明治人の記録(石光真人編著)中公新書【あらすじ】 副題に「会津人柴五郎の遺書」とある。柴五郎は安政六年(一八五九)会津若松藩士であったところの二四〇石・物頭・柴佐多蔵の五男として生れた。昭和二十年(一九四五)年十二月、第二次世界…