tokyokidの書評・論評・日記

tokyokid の書評・論評・日記などの記事を、主題に対する主観を明らかにしつつ、奥行きに富んだ内容のブログにしたい。

日記191121・他画像

日記191121・他画像

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 自分のことを自分で書いたら「自画像」。ならばひとさまが私のことを書いたものは当然「他画像」であろう。これで題名はできた。あとは他人さまの原稿を借用といこう。

 

《以下引用》

題・お茶飲み爺さま

日本へ行くたびに訪ねる爺さまがいる。今は熱海に住んでいるが、八代続いた生粋の江戸っ子だ。江戸時代、生家は両替商だったそうで、居間の隅に「両替」の看板と千両箱が置いてある。本物だ。私は時代劇を思い出した。

「想像していたよりも小さいですねぇ、へぇーこれが千両箱ですか。ネズミ小僧が大店の蔵から盗み出し、千両箱をかついで屋根伝いに逃げるのは、これだったのですね」

 うわずったような声でいうと、

「いやいや、あのねぇ、××さん」

爺さまはいった。

「千両も入った箱は一人じゃもてないよ」

そりゃそうだ。1ドルコインでも30枚持つとずっしりと重い。小判が千枚だと、どれほどの重さになるか見当がつかない。

「今のお金に換算すると億だね」

と、江戸っ子が自慢の爺さまはいう。だから、というのかどうか彼の人生訓は「いなせ」である。いなせとは「鯔背」と書いて、男は粋で勇み肌でなくてはならないという。地方育ちの私にはよく分からない。

「じゃあ女はどうなんですか?」

即座に「おきゃん」と、返ってきた。「お俠」と書く。女は活発で腰が軽くなくてはいけない。「腰が軽いのと、尻の軽いのとは意味が違うよ。おきゃんの方は腰が軽いんだよ」と、注釈を入れた。たしかに「尻軽女」といえば、語感がよくない。「腰が軽い」といえば、きびきび働くイメージがある。爺さまの特徴は日本語にうるさい。ちょっとした間違いでもすぐ指摘する。Eメールでさえ変換間違いを送信すると、すぐいってくる。一度など「先生」を「1000生」と打って送った。

「なんですか、あれは。送信のまえに読みかえさないから、こういう間違いがおこるのです」

先日、こんなことがあった。

「古希」が七十歳であることくらいは常識であるが、爺さまが言うには、この漢字も文部省(今は名称が変っているが)が決めた誤字当て字のたぐいだという。もともと杜甫が「人生七十古来稀なり」とした言葉からきたのだから、いくら「稀」の字が当用漢字にないからといって意味の通らない「希望」の希を国民に使わせるのは憲法違反だと、薄くなった頭のてっぺんから湯気を立てて怒っている。私に怒ってもしようがないと思うが、茶飲み友だちのよしみで適当に相槌をうちながら聞いている。 

爺さまは、日本語にうるさいくらいだから自分で書く文章にもこだわる。何冊か著作もある。古今東西の事象についても詳しく、博学である。現役中は某日本企業の海外社長をやっていた。満60歳のときに定年退職をし、気候のよい南加に東部から移住してきた。はて趣味はと考えたときに浮かんだのが古籍で読んだ江戸狂歌だった。が平成の世に狂歌の会はない。そこで川柳でもやるか、川柳しかやるものはないと、首をつっこんだが最後、のめりこんでしまった。そのころ私と爺さまは出会ったのである。

当地の小冊子TV-fanにお互いエッセイを書いていた。

「おしゃべりの会にきませんか」

私は夫を亡くしたばかりの2001年7月だったので、出かける先があればどこでも良かった。紅一点、恐れもなく出かけたが、発言する能力もなく、ひたすら聞き役にまわった。この会はのちに369会という読書会へとつながっていくことになるのである。

会を立ち上げた直後、爺さまは老後の医療などを考えて日本へ引き揚げてしまった。会は置き土産となった。

爺さまの奥さまというのがなかなかの才媛だ。イギリスへ駐在しているころに知り合って結婚。いまでも、お互い「ちゃん」づけで呼び合っている。

私を川柳へ導いたのも爺さまだ。2017年に「とんぼ川柳」を立ち上げた。そのとき選者をお願いし、指南役にまでなってもらい、あれこれアドバイスをもらっている。だから、私より一日でも長生きしてもらわないと、困る。祈るような気持ちなのである。(××女)

《以上引用》

 

 いやはや、他人さまの目というものは・・・・・なのであるが、自分としては「ゲーリー・クーパーの向こうを張れる美男子・・・」とか「戦前・戦中の日本を覚えているのはオレが最後の世代だぞとばかりに自信に溢れた顔」だの「いつもあなたが頭の後側で考えていることは見通していますよといわんばかりの温顔」などの誉め言葉が一向に出てこなかったのが不満なのだ。□

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