日記171221・小林一茶
日記171221・小林一茶
俳人・小林一茶は誰でもご存じだろう。既にご存じかも知れないが、四季の句を二句づつ挙げる。
●雪とけて村いっぱいの子供かな
●悠然として山を見る蛙かな
●大蛍ゆらりゆらりと通りけり
●蟻の道雲の峰より続きけむ
●けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ
●仰むけに落ちて鳴きけり秋の蝉
●うまさうな雪がふうはりふうはりと
●ともかくもあなたまかせの年の暮
一茶は俳諧師だから自然ばかり詠んでいるかというとそうではない。きちんと人間観察も怠りないのである。この点川柳と一脈通じるところがある。
一茶は江戸中期の人。西暦1793年生、1828年没というから三十五歳前後で没したことになる。やはり当時の人は短命であった。一茶は「おらが春」を含めいくつかの句集が知られている。俳諧師といえば世情には無頓着で枯れた人という印象であるが、実際はどうしてどうして、兄弟喧嘩でも妻との性愛でもなかなかお盛んであったようだ。
私は俳諧・俳句にはうといが、川柳には関心があるので、一茶を川柳の立場から見てみる。上記の八句にしても、「かな、けり、や」などの俳諧特有の切れ字を除けば、川柳としても立派なものである。温かい人間の目でみた見付け、対象の動作の観察、描写の目線など、川柳人にとっても恰好の手本といえる。川柳をたしなむ人は、すべからく一茶の句を読んでみることだ。
幸い多くの現代作家も一茶には特別の興味を持つとみえて、次のような著作がある。
●藤沢周平・一茶
●田辺聖子・ひねくれ一茶
●井上ひさし・小林一茶
読者諸賢にはどれでもいいから一読をお薦めしたい。□
(写真はネットから借用)