tokyokidの書評・論評・日記

tokyokid の書評・論評・日記などの記事を、主題に対する主観を明らかにしつつ、奥行きに富んだ内容のブログにしたい。

日記180911・駿府の安田屋本店

tokyokid2018-09-11

日記180911・駿府の安田屋本店
 日本のいいところは、まだ古き良き時代が残っていることだ。蕎麦は国民食ともいうべき食べ物だ。嫌いな人はあまりいないだろう。でも作る方からいえば、蕎麦ほど店によって味の違うものもない。それは蕎麦そのものだけでなく、出汁、種物の場合は種の、果ては器に至るまで、その店の特徴がよく出るものだからだ。さらに言えば、店の飾り付けや雰囲気まで問題にされる。入口あたりに植物の鉢がごちゃごちゃ置いてあったり、店内に植木が持ち込まれていてそれに蜘蛛の巣が張っていたりする店は願い下げにしたい。
 徳川家康の晩年の本拠はずっと駿府であった。今の静岡市である。ここの駿府城は当時数ある名城のなかでもひときわ大きいいい城であったが、明治維新政府の手によって完膚無きまでに打ち壊された。維新政府にしてみれば、仇敵の牙城だから当り前といえば当り前なのだが、ここは徹底してこわされた。その堀のほとりに「安田屋本店」という蕎麦の名店がある。この店の来歴は古く、室町ごろから木綿を川に流して油分を流し去る晒屋を稼業としていたが、幕末のペリー来航の前年だかに蕎麦屋に転業したという老舗なのだ。
 ここでは二八蕎麦はもちろん、十割蕎麦も出す。 それがまたうまいのだ。うまい蕎麦屋がすべてそうであるように、この店の出汁は絶品だ。種物はもちろん、いまどきの店だからサラリーマンが集まる昼飯どきにはマグロのづけ丼と蕎麦のセットも出す。さすがマグロで有名な焼津近くの静岡市ならではのメニューである。いずれにしても蕎麦好きにはたまらない店なのだ。町の中の蕎麦店だから、価格は町の中のごく普通の値段である。観光地の値段だけ高く取る名物蕎麦屋とは訳が違う。
 と、ここまで書いて最近二度目の探検に出掛けた。こんどはメニューも落ち着いて読んだ。その結果、この店は蕎麦屋でありながら蕎麦そのものにはあまり力を入れておらず、近隣のサラリーマンのための昼食屋になっていることを発見した。たとえば蕎麦でいえば、かけはあるがもりはない。蕎麦だけのメニューが貧弱だ。その代わり飯物とセットのメニューはふんだんにある。つまりここは蕎麦屋というより昼食屋なのである。それでもここの蕎麦はうまい。だが板場は蕎麦よりも昼食・定食のたぐいに力を入れているように見える。たしかにそれはそれでうまいしボリュームも満点だ。私が食べたのは蕎麦とまぐろヅケ丼のセットだったが、近くの焼津港のまぐろはたしかにうまかった。
 それを承知で出かける人のために以下を記しておく。 この店は JR静岡駅前からバスで三つ目、歩いてもせいぜい20分くらいしかかからない。機会があったらいちど立ち寄られることを是非お勧めしたい。□
(写真はネットから借用)