tokyokidの書評・論評・日記

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書評・中国全省を読む地図

tokyokid2008-08-12

書評・中国全省を読む地図(莫邦富著)新潮文庫

【あらすじ】
 著者は中国上海生れ、つまりこの本は日本在住の中国人による中国全省の紹介本だ。扉書によると「22省・4直轄市・5自治区・香港・マカオ・台湾」となる。台湾など最後に記してある3地域は、なにも中国全省の一部として紹介してもらわなくても、日本人は直接出向いて先刻承知のところなのだが、中国全省ということで別扱いすることはできないのだろう。この本では、中国が主張する中国領を全部網羅してある。ここのところを、北方領土竹島尖閣諸島など外国との紛争地域を抱える日本としては、深く読み込んでおかねばならない。筆者としては、たとえば日本紹介の書物すべてにおいて、これらの紛争地域も含めて、日本が主張する領土はすべて洩れなく(いま流行の言葉でいえば「きちんと」)紹介しておく必要があると思う。
【読みどころ】
 前回ご紹介した「アメリカ50州」にくらべれば、中国全省は前項の分類によっても34地区だから、各省に割り当てられる頁数も多めである。省などの略図と並んで、各地の風物などの写真版も豊富に挿入されていて、読者は各地の雰囲気を感じることができる。俯瞰的に中国を理解するには恰好の入門書と言うことができる。
【ひとこと】
 この本では、地名の日本語読み、中国語読み、韓国語読みがそれぞれ自由に使い分けられている。たしかに中国でも日本でも漢字は使われているが、読みについては「音と訓」に代表されるように、中国語読みと日本語読みの両方が存在する。さすが中国は大国だからなのか、こうした漢字の日本語読みにそれほどうるさく干渉してこないが、ご承知のように、朝鮮半島の国は、漢字の読みを現地語読みにすべきだとうるさく内政干渉してくる。なんの弱味があるのか、日本政府は韓国などのその種の要求を鵜呑みにして、たとえば韓国人の名前を韓国語読みにするよう日本国民に負担を強いているのが現状だ。韓国語を知らない大多数の日本人にとっては、大迷惑な話である。たとえば「京城」は日本語読みでは「けいじょう」である。なるほど朝鮮語読みでは「ソウル」または「ソホウル」かも知れないが、朝鮮語読みを日本人が(それも他国の内政干渉によって)日本国内の使用で強制されるいわれはなにもないと考える。ここのところを日本政府はどう考えているのか。もともと漢字は、その土地それぞれの読みで通用させるのが当り前であり、だからこそ本場・中国でも、北京語や広東語やその他多彩な方言が生れて、それぞれの地方で通用している現実がある。その場合使っている漢字は同じ漢字なのである。重ねていうが、さすが中国は大人の国で、日本語読みを筋違いで問題にしないのは(当然とは言え)ひとつの見識であろう。
【それはさておき】
 前項で説明したことに関して、日本政府はもっとはっきり方針を打ち出すべきだ。第二次世界大戦の敗戦後のどさくさで、国境線を変えた李承晩ラインによる竹島の実力占拠など、相手側には目に余る違法行為があった。その時代の痕跡を引き摺っているのが現状だろう。(いまさら遅い、との議論は後回しにして)日本が当然の主張として竹島を日本領土だと教科書に明記すると決めれば、韓国は他国の内政干渉である行動であることをいささかも省みず、いまでも自国の都合だけをも日本に押し付けてくる厚かましさである。このあたりが、大人の国・中国と、国際慣例を考慮することなく、自分の都合だけを押し通す国との違いといえよう。余談ながら漢字の読みに関していえば、大人の国・中国ですら、戦後日本に対して日本古来の呼称である「支那」の使用を「中国」に切り換えるよう強硬に要求し、日本の政府もそれに従って半世紀が過ぎた。支那は英語表記のChinaと同じく「秦」から発しているというのに、である。□