tokyokidの書評・論評・日記

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書評・国際ビジネスのためのプロトコール

tokyokid2008-02-23

書評・国際ビジネスのためのプロトコール(寺西千代子著)有斐閣ビジネス

【あらすじ】
 本書はまだインターネットが普及する前の一九八五年に初版が刊行された。日本の経済が最高潮(バブル)に達しようとする直前の頃であった。本の腰巻には「キャリアを積んだ国際派・これからチャレンジする人への国際儀礼の手帖です」とある。副題に「心得たい国際儀礼」ともあり、後述するとおり、外務省で国際儀礼を担当する著者によって著された。内容は前段として・・・・・
・ まえがき
・ 序章・国際儀礼の基本的考え方
・ インタビュー・藤山楢一元駐英大使に聞く
・・・・・とあり、さらに・・・・・
<第?部>日常生活(社会面)の do と don’t
第1章・紹介
第2章・ディナー
第3章・パーティ
第4章・テーブル・マナー
第5章・贈り物
第6章・服装
第7章・祝儀(結婚式)
第8章・不祝儀(葬式)
第9章・レストラン
第10章・劇場
第11章・一般的なマナー
<第?部>ビジネス(オフィス)の do と don’t
第12章・手紙
第13章・敬称
第14章・国際会議
第15章・公式行事
第16章・電話
第17章・名刺
第18章・スピーチ
第19章・海外旅行(出張)
・・・・・と続き、そのあと「巻末資料」「参考文献」「あとがき」と続く。国際儀礼に関する解説本である。
【読みどころ】
 本書はもちろん「国際儀礼」に関して解説された本であるが、もっと小規模の、たとえば企業で外国の代理店の代表者などを招いて企業見学や会議を開催する際の(儀礼遂行上の)よき参考書ともなる。さらにいえば、人類の歴史始まって以来、上に立つ者と立たれる者の区別ができてからの、上に立つ者同士の儀礼の常識、というふうに考えてもいいのかも知れない。そのことを具体例を以って、舞台表と舞台裏の両方から、相手に失礼のないようにと解説されたのがこの本なのである。「儀礼」であるから「建前」が最重要であり、「本音」を少しでも染み出させないことが、最上のもてなしであることが、本書を読むことによって理解することができる。換言すれば「国際的に公式なウソのつきあい」のノウハウ版ともいえるのである。逆に見れば、優秀な外務官僚というものは、このような儀礼(虚飾)に満ちたやりとりのなかから、国益に資する情報を引き出して本国の利益に結び付ける者であろうが、いまの日本の外務省に、そのようなことのできる優秀な外務官僚が少数でも存在することを願ってやまないのが評者である。
【ひとこと】 
 本書は日本・外務省儀典官室で国賓・公賓の訪日準備を担当した寺西千代子女史の著作である。同じ女性ではあるが、外務大臣に就任した田中真紀子女史によって初めてベールがはがされて以来の昨今の外務省の不祥事を知っているわれわれ一般国民からみると、この本を読んで、へえ、外務省にも真面目に仕事に取り組んだ人がいたんだ、というのが正直な感想であろうが、なに、不祥事を起すのは主として決定権を持っている人たちの一部なのであって、決定権を持たない、つまり管理職でない人たちは、得てして真面目に日常の仕事をきちんとこなす人が多いものなのだ。これは役所と企業とを問わず、永遠の真理であろう。(もちろんこういう人たちのなかにも、偉くなるに従って不正を働く人もでてくる。それは権力の持つ特有の魔力に勝てない人、ということもできる)。
【それはさておき】
 仕事は「ホンネ」だ、と真面目になって目前の仕事に励む(大多数の)人々にとっては、あまり用のない本書である。だが、「人生ではお上から勲章をもらう者がいちばん偉い」と「タテマエ」を尊重し、そのために努力する(一部の)人々にとっては、非常に重要な儀礼のプロセス解説書であろう。ただ「真面目派」にとっても、服装や席次などの実用的な部分は、それなりに日常の参考になるに違いない。□