tokyokidの書評・論評・日記

tokyokid の書評・論評・日記などの記事を、主題に対する主観を明らかにしつつ、奥行きに富んだ内容のブログにしたい。

日記200411・キミは羽釜でメシが炊けるか

日記200411・キミは羽釜でメシが炊けるか

f:id:tokyokid:20200411204708j:plain

 皆さんは信じないかも知れないが、戦後間もなく民生用として家庭用電気炊飯器が出回るまでは、ご飯は羽釜で炊くものであった。どこでもそうだった。羽釜はご覧のとおり鉄製の釜だけであるから、中に入れた米に水を足して加熱しなければメシにはならない。加熱する力は羽釜には備わっていないから、ふつうは上記のとおり米と水を仕掛けた羽釜を竈や焜炉の上に置いて、下から加熱しなければならなかった。燃料は主として薪と呼ばれる木材や廃材を適当な長さに切って使った。焜炉の場合は練炭や豆炭を使った。

 羽釜でメシを炊くとすれば、火加減がむずかしい。まず上記の薪に火をつけるのもある程度の熟練を要する。火がついたとしても、そのあとメシを炊くための薪の燃え加減の調節がむずかしい。ほんとうは一回に炊く水の割合や炊き加減からしてなかなか一筋縄ではいかないのが普通であった。

ま、このやり方のひととおりを書いてみようか。

▼羽釜の内側をきれいにする。戦時中は亀の子タワシなど売っていなかったから、麦わらを丸めて使っていた。前回炊いたメシの残滓を水で洗い流すわけだ▼米を計っていれる。ふつううちでは兄弟が多いので毎回一升炊いていた▼米を磨ぐ。いまでは磨ぎ方を知らない人も増えている。そこで拙作の川柳・洗剤で米磨ぐ嫁の親の顔・・・となるわけだ▼あまり洗い過ぎて糠を落し過ぎてしまうと栄養価が落ちるというのでそこは適当に留めておく▼水を適量入れる。この量が難しかった。水加減でメシの固さが決まる。私は母に教わって、手首のシャツをまくって腕を直角に水に入れて踝の上まで、ときめていた。慣れるとうまくいくものだ▼蓋をしてかまどに火を付ける。紙や松の落ち葉など、燃えやすいものをいちばん下に敷いて上に薪の細かいものから順に積み上げてマッチで火を付ける。このときかまどの周りに薪や燃しつける材料などが戦乱していると火事になるので必ず周りを掃除しておくことが必須▼かまどが吹いて蓋の下からぶくぶくと泡が出るとほんのちょっと蓋をずらして泡が出なくなるまで待ってまた完全に蓋をして、短い時間薪を燃し続ける。5分から10分くらい▼炊きあがったと思ったら、薪を燃え尽きさせてあとは余熱で炊きあがるまで待つ。これはメシをふっくらと炊くための大切な儀式で、これを炊きあがってすぐ食べたりするとぺちゃんこのメシでまだまずい、これを「ふかす」と称した▼要するに全体を通していえば「始めチョロチョロ中バッパ、赤子泣いても蓋取るな」ということになる。

 これを小学校3年から5年のとき東京に帰って来るまでの2年間母のいいつけで毎日メシを羽釜で炊いていた。だから私はいまでも羽釜でうまいメシを炊けるぞ。□

(写真はネットから借用)

f:id:tokyokid:20200411204730j:plain

f:id:tokyokid:20200411204811j:plain