tokyokidの書評・論評・日記

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日記140201・うなぎめし

tokyokid2014-02-01

 昨今うなぎめしは高くなった。三年ほど前は二千円直前であった「うな丼」や「うな重」の「並」が、いまは三千五百円とか四千円の時代である。昔うなぎは鮨や蕎麦とならんで「ハレの日」のご馳走の最前線であったが、いまはこのように値段が張って最高級のご馳走になってしまった。これでは昔のように気楽にうなぎを食いにいくこともできない。
 うなぎは関東と関西で著しい料理法の違いがある。江戸の中期、池波正太郎の描写を借りれば、それまでは「うなぎにたまり醤油やら山椒味噌などをつけて丸焼きにし、はげしい労働をする人の口をよろこばせるはしても、これがひとつの料理として上流・中流の口に入るものではなかった」そうである。その後江戸・関東では、「背びらきにしたのを蒸しあげて強い脂を抜き、やわらかく焼きあげ、たれにも工夫が凝らされるようになり・・・(剣客商売・悪い虫)」ということになって、これが現在江戸・東京を中心とする関東のうなぎめしの原形になった。江戸では腹びらきではなく、背びらきにこだわったのも、武家が多かったので「ハラキリ」を忌んだことによる、という説もある。
 ところが関西では、いまでもうなぎを焼くまえに蒸すことをしない。だからうなぎに脂が残って、食感とくに皮の部分が固くなってしまう。これが関西風のうなぎめしなのだ。で、地理的にどこが境目かというと、私の観察では、これが浜松なのだ。浜松は浜名湖のほとりで「うなぎ」の本場だから、いまでもたくさんのうなぎめしを食わせる店があるが、関東風の脂を抜いて焼いたやわらかいうなぎ飯と、関西風の脂の残ったまま焼いた皮が固いうなぎ飯を、それぞれに提供する店が共存する。浜松以東たとえば静岡、三島などでは関東風のうなぎめしのみが供され、浜松以西たとえば豊橋や名古屋などでは関西風のうなぎめしのみが供される。異色なのは、関西風に焼いたうなぎを切って飯の上に載せた名古屋特有の「ひつまぶし」だろう。これも皮の固いうなぎを使用することは言を俟たない。私は、といえば、江戸っ子だから間違いなく江戸風のうなぎめしならうまいと感じる。ましてや「ひつまぶし」を茶漬にして食う趣味なぞはない。だいたい「ハレ」の日に、家で略式に食うのが本筋の「茶漬」など、人前で食わされてたまるものか。
 写真は上からそれぞれ「関東風うな重・その一」「関東風うな重・その二」「関西風うな重」「名古屋のひつまぶし」である。写真ではうなぎが固いかやわらかいか、その質感がわかりにくいかも知れない。ネットから借用。