tokyokidの書評・論評・日記

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日記150421・阪急電車と阪神電車

tokyokid2015-04-21

 私は野球では阪神タイガースのファンだが、電車では(関東・関西は言うに及ばず全国の全電車を含め)断然関西の阪急電車のファンだ。それもぶっちぎりのダントツ・ファンなのである。理由はふたつある。阪急電車は電車から駅舎から鉄路からすべてが清潔であること、そして電車の塗色に見るごとく、古い伝統を守って「変えない」からだ。
英語で「dry paint」といえば、手入れせず乾いてしまってヒビ割れのしたペンキ塗色、という意味で、欧米でこういう状態で放り出しておけば、その所有者が町の美観を損ねる管理しかしていない、ということで社会的な糾弾の対象となる。だが阪急電車にはそれがないのだ。日本人はペンキやサビの古い・新しいにまったく関心がないから、鉄道に限らず橋でもビルでも、至るところで「サビ」が吹き出ており「dry paint」でくたびれ果てたペンキを見ることができる。
また阪神間つまり大阪と神戸の間には、山側から阪急、JR,阪神の3本の電車が並んで走っている。大阪府から兵庫県に入ると、このあたりは六甲山系から海岸線まで街並みがあって、その山と海の間を3本の鉄道が競って走っているわけだから、壮観なのである。受益者にとってもサービスがよくなる。これは一般にお上の顔色ばかり窺うことの多い関東では見られない光景なのだ。資本主義社会では、競争なくして進歩なし。最近の郵便局と宅配各社との競争を見ていればよくわかる。
 私鉄の中でも特徴がはっきりしているのが阪急電車だ。車体の色ひとつとっても、最近は飛行機でも電車でも、車体いっぱいに子供のいたずら絵みたいなものをベタベタと書いた無神経なペイントのものが多いが、この阪急電車の潔い内外装はどうだ。戦前の国鉄電車はみなこのような「小豆色」だったが、現在ではご覧のとおりよく言えば百花繚乱、正確に言えばなにもデザインのない、成熟した大人の乗客にとってはなんの案内にも娯楽にもならないペンキ塗色が多いのだ。最後の写真一枚はその無機塗装の一例で、阪神電車の梅田駅(JR大阪駅前)の終点風景である。ちょっと見にくいかも知れないが、阪神電車の色使いを阪急電車のそれとくらべてほしい。阪神電車はこの色で統一しているのではなく、短い路線に乱雑な色使いの電車を多々投入しているのである。これでは例の「村上ファンド阪神株買い占め」事件をきっかけに、阪神電鉄が阪急グループに吸収されてしまったのもむべなるかな。
 もうひとつ、関西の私鉄は標準軌を使っている。JRの「狭軌」にくらべて欧米仕様の「標準軌」はレールの幅が広いので、乗り心地も輸送力も一回り上の性能を確保できる。関東の私鉄では品川と三浦半島を結ぶ京浜急行がこの標準軌を使っているが、関西では私鉄の両雄・阪急と阪神がその標準軌を使っている。JRの狭軌にこだわらない姿勢は、関西阪神タイガースファンの首都圏読売ジャイアンツに媚びないファンの基礎心理、つまり「お上の言うことに唯唯諾諾として従うばかりではない」関西特有の姿勢と相通じるものがあるのではないか。