日記140728・遅かりし由良之介
写真のものは、すべて売却されて、もう日系市民のものではなくなってしまった。
先日お知らせしたロスアンジェルス・ダウンタウンにある日系高齢者ホームが売却された、と地元の日米バイリンガル日刊新聞「羅府新報」に記事が掲載された。現地の日系の高齢者の唯一のよりどころであった老人ホームが、心ない経営者によって日系とはなんのゆかりもない第三者に売却されてしまったのだ。
遅かりし由良之介。この事態を憂慮する人々の善意は、結局間に合わなかったのだ。
この老人ホームは、約145人の収容能力があって、常に満杯状態であったが、売却のうわさが出てからは入所志望者が激減し、いまでは空室があると聞く。
それよりなにより、いまここに入居している人たちは、これから先どうなるのだろうか。入居費を値上げされても、払えない人もいるだろうし、行く先のない人もたくさん居る。そしてこの施設をいままで支えてきた日系企業の寄付金も、ぜんぶ藻屑と消えたわけだ。そして売却益はどこに行ったのか。疑問は募るばかりである。
売却した張本人は弁護士だというが、法律とは人間社会の最低限度の規範でしかない、ということがこの事件からも良く解る。この弁護士のように、法律さえ守ればいいということであってはならない、ということをわれわれはよくよく学ばねばならない。
写真は先週取り外されたと取り沙汰された、この施設を戦後ゼロから作り上げた人たちのレリーフから始まる数々の点景。いまはただ空しい。痛々しい。