tokyokidの書評・論評・日記

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日記130317・Dantes View

Dantes View1

デス・バレーの中央部にあって、広くこの「死の谷」を見渡せるのがこの Dantes View という展望台なのである。写真はその光景を何枚かに収めたものだ。空に飛鳥なく、地に走獣なし、という形容がそのまま当てはまる荒涼とした景色だ。地には草木も(オアシスを除いて)ほとんどない。
 この展望台に、13世紀だったかのトスカーナの詩人「ダンテ」の名を冠したのは誰か知らないが、ダンテといえば「新生」「神曲」。そのなかでダンテが永遠の理想とした女性はベアトリーチェだった。そのダンテの名をこの地名にもってきた命名人は、よほどこの景色に圧倒された才人であったと見える。命名の意図はダンテだけのスケールを持ったこの景色ということなのか、景色としてみればベアトリーチェに匹敵する美しさということなのか。私の貧しい想像力では、そこまではわからない。
 おおむかしバージニア・メイヨ主演の「死の谷」という映画があった。わたしはこの映画を見ていないので、論評できない。もうひとつ、これまた大昔にウォルト・ディズニーが作った「砂漠は生きている」という、当時は珍しかった「総天然色」の映画があった。その頃は、カラー映画のことをそう言ったのである。この映画は、灼熱期には死んだようになっている砂漠でも、冬の雨期がきて雨が降ると、動物や植物が活き活きと生活活動を始めるさまをドキュメントにした映画で、見たのはたしか小学校高学年であったと思う。これは息を呑むほど美しかった映画であったことを覚えている。ここは大きな植物や動物は稀だが、小さなものは無数に存在する極限の地なのである。雨期には可憐できれいな小さな花もたくさん咲く。
 18世紀、19世紀のいわゆる西部開拓劇の時代には、東から西に向う馬車の列が延々とこの死の谷を横切ってカリフォルニア沿岸部に向った。アメリカ文学古典の「Oregon Trail」つまり「オレゴン街道」の時代のことであった。馬車を連ねてこの高低差のある谷を横切るのはさぞ難儀なことであったに違いない。ここのそばにはいまではゴーストタウンの Calico の町並みを商業ベースに乗る形で再建してあって、観光客を集めている。