tokyokidの書評・論評・日記

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日記121006・淡き赤飯

tokyokid2012-10-06

日記121006・淡き赤飯
 写真ではわかりにくいかも知れないが、これはむしろ桜色の赤飯、と言いたいくらいの淡い色の赤飯である。近所のスーパーで買った。250グラムで298円なり。値段は確かに安い。でも原材料欄を見ると「もち米(国産)、ささげ豆煮汁、ささげ豆煮、たれ、胡麻塩添付、調味液、食用植物油脂、調味酢、(その他大豆由来原材料を含む)、酒精、pH調整剤、調味料(核酸)」とある。最近の赤飯にはずいぶん見慣れない材料が入っているものだ。そしてこの赤飯を口に入れたときの食感は、もち米だけではなくうるち米もまぜてあるのではないかと思ったほど飯米の腰が弱かった。でもそれはなかったようだ。それにしても厖大な種類の調味料が入っているものだ。
 母方の祖母が作る赤飯は絶品だった。明治生まれの人だった。赤飯の色はあくまで赤く濃く、淡い桜色なんかではなかった。米粒は一粒一粒、光って立っていた。小豆の数は、写真と比べ物にならないくらい多かった。材料はもち米のほかは小豆しか使わなかったと思う。戦時中など、小豆が手に入らなかったときは「大納言」という小豆まがいの豆を使っていた。それでもその赤飯は真っ赤で腰が強かった。食べるとズンと飯米が胃にたまる感触があって、いつまでも腹が減らなかった。
 最近のテレビの料理番組を見ると、とにかく手を抜くことしか教えていない。手抜きのおいしい料理なぞ聞いたことがない。うまい料理を作ろうとすれば、いい材料を入手して、時間と愛情をかけて、自分の料理経験を総動員しなくてはならない。共稼ぎで時間に追い捲られる奥方ならともかく、専業主婦が家族を放り出してそこいら辺のファミリー・レストランで友達とのおしゃべりで午後をつぶす、そして夜疲れて帰ってくるご主人の晩飯は手抜きでチョイチョイ、というのはよく見たり聞いたりする図だが、こういうことでは、うまい料理などできっこない。
 じつはいまでもそれなりの和菓子屋に行けば、赤いうまい赤飯を買うことができる。でも値段は上述のスーパーのものの2倍以上はする。昔のものはなんでも稀少で高くなった。わたしのような昔者には、住みにくい世になってしまった。