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論評・羅府新報「磁針」コラム・半世紀ぶりの麻雀【090429】掲載原稿

tokyokid2009-07-23

題名・半世紀ぶりの麻雀
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 最善のボケ防止策として毎週一回麻雀大会を開いているウィドウズ・クラブが当地にある。参加者は当然お年を召した方々である。かつて麻雀は「亡国病」などと言われ、国策として禁止した国もあったと聞くが、平和と長寿を享受するいまの日本人にとっては、高齢者の脳を刺激するボケ防止ゲームとしてこれほど手頃なゲームはなかろう。当方はといえば、学生時代に悪友から数ゲームの手ほどきを受けただけで、現役時代は麻雀の付き合いもなくて済む仕事であったこともあり、ここ半世紀以上も雀卓を囲む機会がなかった。それが知り合いのメンバーのひとりに誘われて、実に半世紀ぶりにひとゲームを楽しむことになった。もとより役の作り方、点数の数え方、上がり方からゲームの勝ち方に至るまでなにも知らないのであるから、その点ではまことに心許ない状態での参加であった。
 半世紀前の学生生活にはまだ麻薬はなく、手軽なヒマつぶしはもっぱら麻雀かパチンコであった。授業そっちのけで学費から生活費まで稼ぐ豪の者がいくらでもいた時代であった。彼らは学生でありながら、頼まれれば社会人に交じってゲームに加わって勝つも負けるも自由自在、稼ぎまくっていたものだった。当時はどこに行っても雀荘があり、授業があってもなくても朝からもぐりこむ学生も多く、もうもうたるタバコの煙のなかでジャラジャラと卓上の麻雀牌を掻きまわし、昼になれば近くの中華料理店からラーメンか焼飯などの出前を取り寄せてもらって日がな一日、麻雀にふける学生も少なくなかった。覚えがある方も多かろう。
 あれから幾星霜、街の麻雀屋はすっかり姿を消した。いまは老若男女を問わずコンピューターゲームが盛んだから麻雀はすたれてしまって、老人ホームですら麻雀で遊ぶグループを見かけなくなった。だからいまどき麻雀に興じる人々は稀少価値があるというものだ。それでズブの素人の当方も喜んで参加させてもらって、美人の先生役に教わり教わり四時間ほども老化した自分の脳を充分に刺激し、まことに楽しい半世紀ぶりの経験であった。 (木村敏和)
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