tokyokidの書評・論評・日記

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論評・磁針コラム・ニュース・バリューとは

tokyokid2008-09-29

論評・ニュース・バリューとは【羅府新報080911付磁針コラム掲載原稿】

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 犬が人を咬んでもニュースにならないが、人が犬を咬めばニュースだという。日本で正義感を振りかざすマスコミは珍しくもないが、自分の下半身は棚に上げて政治家の女性スキャンダルをあげつらう新聞社や、自社の大スポンサー企業のリコール問題など不利なニュースは報道しない、あるいはしても扱いはごく小さい、という偏った報道をしばしば目撃する。マスコミであるからには、人が犬を咬んだら平等な扱いでニュースにしてもらいたいと思うのは、読者の願いであるはずだ。
 自動車業界誌の「オートモティブ・ニュース」8月25日号は、「ポートフォリオ」というビジネス誌の9月号が「スピードは人殺しだ」という4千2百字の記事を掲載した、と報じた。内容は日本の日産自動車を短期間で立て直して親会社のフランス・ルノー社の最高幹部に登用されたカルロス・ゴーン氏のもとで、二〇〇六年の十月から二〇〇八年二月までの間に、新車の開発スピードを上げるようゴーン氏に命令されたルノー社の新車開発担当の技術者五人もが自殺した、というものだ。この件に関しては、フランス官憲も乗り出していると伝えられている。
 破産に瀕した日産自動車を立て直し「名経営者」と称されるゴーン氏は、短期間に効果を挙げた日産での経験をそのままフランスのルノーで実現しようとして部下にハッパをかけたのかも知れない。だが日程を示されれば万難を排して、ということは残業・徹夜をいとわず身を粉にして自分の仕事を完成させようとする日本人と同じことを、夏休みを何ヶ月も取る習慣のある国の労働者に同じスピードで求めても、それはちと無理な話ではないのか。これは無理が通って道理が引っ込んだのであり、人が犬を咬んだと考えるべきである。
 再び言う。マスコミはすべてのニュースを平等に扱うべきだ。ニュースの主人公がカリスマであっても、ニュースの企業がスポンサーであっても、バリューのあるニュースは不偏不党の立場に立って報道してくれなくては、読者が迷惑する。 □
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