tokyokidの書評・論評・日記

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書評・日経経営指標

tokyokid2008-03-13

書評・日経経営指標(日本経済新聞社編)日本経済新聞社

【あらすじ】
「日経経営指標」は、銀行・保険・証券を除く全国の上場会社の決算数字に基く経営指標を、年度ごとに算出したものである。業種ごとに中分類・小分類に分けてある。いわば業種ごと、上場会社ごとの経営成績簿である。内容は「?・指標編」「?・資料編」「?・ランキング編」に分かれる。上場会社の場合、諸経営指標を、自社と業界平均、自社と他社、という具合に簡単に企業ごとや業界平均値などの数値を比較・検討できるところがミソである。
【読みどころ】
 本書は全部で約九百頁のうちの八百頁ほどを「?・指標編」に費やしている。「?・資料編」では業種ごとの「加重平均値・単純平均値」を「安全性」「収益性」「成長性」「生産性」「その他」の各項目に分類して数値化してある。「?・ランキング編」では、売上高、経常利益など17項目にわたって上位四〇〇社のランキング表を掲げてある。これは、ふつう投資家が売買する上場会社について、各社の経営状態に関して一覧性を以って簡単に比較し、数値を検証できるところがおおきな利点である。各自が個別に作業したら大変な作業量になるであろうところを、こうして一冊の本で通観できるところが有難い。
【ひとこと】 
 本書を利用する側を想像してみれば、法人の経営企画に携わる人たちや、法人・個人を問わず株式の売買などを通じて証券投資を行う人たちの顔を思い浮かべることができる。本書の大部分は、一見無味乾燥な数字の羅列であるが、中味をよく読み込んで比較検討することにより、全産業、業種別、各社別の経営プロフィールが浮かび上がってくる。経営指標という数字に裏付けられた経営プロフィールを得られることが、本書のもっとも大きな特徴であろう。
【それはさておき】
 本書の冒頭には、約十頁にわたって「凡例」を記してある。そのなかには勿論各項目の定義が記載してある。とくに「収録指標」の解説欄では各項目の計算根拠、たとえば「売上高人件費率」とは「人件費÷売上高×100」であると記してあるが、そのほかにこの売上高人件費率は「収益性」を見る指標のひとつであることを確認することができ、ひいては収益性を見る指標にはどういうものがあるか、その特定の数値で高い実績を挙げた企業はどのような経営努力を払っているか、などとその会社の経営事情を推測することができるなど、眼光紙背に徹して本書を読み込む実力のある人にとっては、企業分析のためにこれほど力を発揮する書物も少ないのではないか。とはいうものの、本書を証券投資の資料として座右に置き、日常的に参照している投資人がいるとすれば、その人はかなり真面目な投資家であると評価することができるだろう。この種の出版物の宿命とはいえ、定価は著しく高価である。評者が本書評の底本としたのは手許の昭和61(一九八六)年版であるが、現在は「日経経営指標・全国上場会社版・2008年」として「定価五万七千七百五十円」で発売されている。□