tokyokidの書評・論評・日記

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コラム・わたしのアメリカ観察 12

tokyokid2012-01-10

55+コミュニティ

 アメリカには、「55+」すなわち「55歳以上」しか居住できないいわば高齢者専用団地が、いたるところに存在する。南加にある55+コミュニティを例にとって、駆け足で日本との比較を行えるように現状を紹介してみよう。日本ではこれからの高齢者社会の対策に、介護保険の実施だけで万全なのだろうか。

 ニューヨークやボストンやシカゴなど、寒い地域に住むアメリカ人の夢は、引退したら夫婦して暖かい地方に転居して、好きな釣りやゴルフを楽しみながら老後を過ごしたい、ということのようだ。むろんそうするにはある程度の経済的な裏付けがなければならないが、歳をとって、冬寒くなって、腰の骨が痛むようになると、すこしでも楽に過ごせる一年中暖かいハワイやカリフォルニアやフロリダで生活しよう、と考える人がいても不思議ではない。そのようなリタイア組を受け入れるための「55+コミュニティ」が、ここ南加にも数多く存在する。ここでは「55歳以上の居住者の55歳未満の配偶者」などの例外を除いて、55歳以上の人しか居住することができない。
 そのひとつ、ロスアンジェルスダウンタウンから南へ約50マイル下がった太平洋沿岸にラグナビーチ市がある。同市の内陸部がラグナヒルズ市として独立し、最近さらにその中の「レジャー・ワールド」という「55+コミュニティ」が最近独立して「ラグナウッズ市」を成立させた。このラグナウッズ市の市民はすべて55歳以上という珍しい市である。そもそもレジャー・ワールドは1964年に設立され、段階的に拡張されて現在では約1万8千名が居住する、住民の平均年齢が76歳の「55+コミュニティ」である。総面積は2095エーカー(約256万坪)で、個別・集合の両形式を含めて2594戸の独立家屋住宅があり、ほかに約12700戸のマンションがあり、出入りは14個所のゲートを利用するが、安全のためのセキュリティーについては万全の体制が敷かれている、といえる。また敷地内に二つのゴルフコース、6棟のクラブハウス、座席数834の劇場ひとつ、五つの水泳プールなどがあり、そのほか図書館、貸し農園、体育館などがあり、陶芸、木工、金属加工などその辺の町工場顔負けの設備もあり、住民のあらゆる趣味のニーズに対応できるようになっている。同好会というか、ここの趣味のサークルは、これらの設備を使って考えられるほとんどのものがある。体育系、芸術・アート系、趣味・嗜好系、など多彩なアクテイビティがある。ここの住民は、ルールを守り、自由であり、それでいてコミュニティは自治が守られる。
 アメリカの高齢者対策は、できる限り高齢者を寝たきりにしない、ということに尽きる。医療費が非常に高い国であるから、当たり前の対策といえる。ラグナウッズ市の住民の平均年齢は高くても、自分のことは自分で処理することができれば、経済的に引退前の生活水準を落とさずに引退後の生活を送ることができる。そうするための設備や環境が整っているのが「55+コミュニティ」の特長なのだ。
 この点日本の高齢者も、最近は元気に日常生活をこなす「アメリカ型」が増えてきたのが非常に喜ばしい。経済的な負担がそれほどでない、こうしたコミュニティが日本にも増えるといいのだが。□