tokyokidの書評・論評・日記

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日記171101・「モバ」

tokyokid2017-11-01

日記171101・「モバ」
 大正期や昭和ヒトケタ期に「モボ」「モガ」という言葉が流行った。「モダンボーイ」「モダンガール」のことである。当時の先端をいくモダンな男女、という意味であった。
 うちの遠い親戚に、いまは老人ホームに入った九十歳台半ばの老婦人がいる。この人は現在でも着るものや食べるものがとてもモダンな人である。つまりいでたちが目立たない「スガモスタイル」の老人とは少し違うのである。この違いはどこからきたのか。じつは半世紀前に、この人はなんと女性の身で外車の陸送を職業にしていたというのだ。現在の話ではない。昭和二十年、1945年の敗戦直後のことである。このころは女性で自動車運転免許を持っている人自体が珍しい存在であった。
 たとえば前世紀末に亡くなった作家・星新一が書いた本を読んでいたら、同氏は戦後翌年に東京・鮫洲の自動車試験場で、試験官の前で50メートルほどくるまを動かし、簡単な法規上の質問に正しく回答し、5円だかの手数料を払っただけで、自家用自動車運転免許証がもらえた時代の話なのだ。この老婦人はつまり当時大きな外車であったフォードやシボレーを日本全国に陸送する仕事をしていたのだ。当時は外車の陸送のための運転をするだけで、充分に一家を養っていけたという。
 こういうモダン・バアチャンを「モバ」と言わずしてなんと呼べばいいのだろう。□
(写真はネットから借用)