tokyokidの書評・論評・日記

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日記170921・東京中央郵便局跡

tokyokid2017-09-21

日記170921・東京中央郵便局跡
 虎は死して皮を残す。鳩山邦夫は死して名を残した。 
 政治家の鳩山邦夫は1948年生まれ、昨2016年没した。彼が総務大臣だったとき、一つだけ歴史に残るいいことをした。それは東京駅前の旧中央郵便局の建物をいまの切手ビル(なんという軽い名)に建て替えるときのことだ。
 彼は工事中の同ビルを視察して「オレは聞いていない」と宣言し、切手ビルの低層階の前面の設計をやり直させたのだ。通り、つまり東京駅丸の内南口に面したところに、旧中央郵便局のデザインを残すよう命じた、という。だいたい日本は、ビルそのものの建物の可否は論じても、街並みにはまったく関心を払わない習性を持っている。それを旧館のたたずまいを残してくれた鳩山邦夫の精神がうれしい。
 同じく建て替えられた近所の旧丸ビル、旧新丸ビル、旧国鉄本社などがこぞってなんの変哲もない今様のガラス張りビルに建て替えられたのにくらべ、一番目立つところに旧中央郵便局の白い時計つきのビルデザインを残してくれたお陰で、われわれ昔の東京駅丸の内口の風景を見覚えている者にとっては、またとないモニュメントを残してくれたことになる。さすがは鳩山家のお坊ちゃん、味なことをしてくれたものだ。
 惜しいことに、本人は昨年この世を去ってしまったが、彼のしたことは当分残る。私どもは東京駅を通るたびに、旧中央郵便局の面影をしのぶことができる。私個人の感想をいえば、約60年前の社会人なりたての頃、羽田の勤務先と大宮の自宅を往復する帰り道、東京駅で途中下車して、夜でも窓口を開いている旧中央郵便局で、急ぎの外国向け郵便を受け付けてもらったものだった。これだけのことで、当時たとえばアメリカ向けの郵便物がいつも数日早く到着していたようだった。兄の鳩山由紀夫の評判が必ずしも良くないのに、弟の邦夫は、この件だけでもよくやってくれた。一市民としてご冥福をお祈りする。□
(写真はすべてネットから借用)