tokyokidの書評・論評・日記

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tokyokid2016-08-10

日記 160810・土用の鰻
 先月の29日(土)は土用の日であった。もともと江戸では鰻、鮨、蕎麦がご馳走のご三家であるが、物価高騰の昨今の世相にあって鰻だけが飛び抜けて高価になってしまったのは読者諸賢ご承知のとおり。当日都心にある、江戸時代からの老舗であるところの鰻やに行ってみたら長蛇の列だった。それで行列に並ぶのはやめて鰻弁当を二人分夕食用に買って帰った老夫婦があった。この夫婦、夫は江戸っ子で八十路の末期高齢者、妻は七十路の老媼で、味の好みがまったく違う。
 その日の夕食は豪華な鰻弁当であったのは言うまでもないが、問題は鰻めしに付いてきた「汁」が老妻手製の味噌汁であったことで、これが論争の基となった。夫は「鰻であるからには、汁は肝吸いに決まったものだが、家庭では作れないのだからせめて澄まし汁にしてもらいたい」と要望を出したのに対し、妻は「汁であれば味噌汁が鰻めしに付いてもいいじゃないの。ちょうどインスタントの澄まし汁が切れているのよ」と負けていない。
 この結果がどうなったかは聞き洩らしたが、鰻めしについていえば、これはもう背開きにして蒸し上げて油を抜いた鰻にタレをつけてやわらかく焼き上げた江戸風に限る。油ぎって固い鰻をただの付け焼きにしてパリパリの食感で出てくる関西風はデリカシーに欠ける。
 きょうは江戸風の鰻だから付け汁が味噌汁であってもまあいいかと思う老亭主であったらしい。□(写真はその老舗の弁当包装紙。そえにしてもうまかったなあ)