tokyokidの書評・論評・日記

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日記140710・日系アメリカ人の善意の消失

tokyokid2014-07-10

 その昔、戦前からアメリカに居付いた日系人が、艱難辛苦の戦中・戦後を乗り越えて、日系人の高齢者を収容すべく汗水垂らして建設した「日系アメリカ人のための老人ホーム」が、なんといままさに売却され、消失しようとしている。昔の日系アメリカ人の善意の塊を、いまの日系アメリカ人経営者が他国系アメリカ人に売り渡そうとしているのだ。そしてその行為の真相を明らかにすることも、売却を阻止することも、現在の日系アメリカ人および日本人にはできないでいる。だからこのままでいけば、この施設は近々部外者に売却されてしまうだろう。
 この施設の建設の経緯は、高杉良氏のドキュメント「祖国へ、熱き心を」(講談社文庫)にくわしいので、なぜこの施設がいつ誰によって建立されたのかの説明は省く。ちなみに、この私のブログの「サイト内検索」欄に「高杉良」といれて検索クリックすると、この老人ホームの記事がたちどころに出てくるから、試してみてほしい。
 問題は収容能力が約145室あり、過去は入室を希望する人の長いウエィティング・リストができていたこの施設が、現行の日系二世(正確には三世か四世か)の経営者によって「日系でない」アメリカ法人に売り渡されようとしていることだ。さらに問題なのは、その経緯が明らかにされていないだけではなく、地元の100年有余も続く日米バイリンガル日刊新聞「羅府新報」にもまったくこの件に関する情報記事が報道されていない事実だ。だから現在でもこの老人ホームの関係者はもちろん、入居者にさえ正確な情報は伝えられておらず、真相はごく一部の「理事会」のメンバーだけによって独占されている、ということなのだ。
 このままでは戦前生まれの日系アメリカ人が建設した日系人のための老人ホームが、こともあろうに同じ日系アメリカ人の手によって間もなく消失してしまう。そしてわれわれは、いまの「二世」の日系アメリカ人経営者が、この日系アメリカ人を支えてきたモニュメントとも称すべきこの日系高齢者ホームを売却しようとしている経緯も真相も、そしてその売却益が誰のフトコロに入るのかも知るすべもなく、万事ヤミのなかの談合で始末されていくのを、指をくわえて見ているしかない事実だ。これはあってはならないことなのではないか。日系人のわれわれにとっても、看過してはならない事例なのではないか。写真は今回3月に訪米したときの、この老人ホームの写真集。