tokyokidの書評・論評・日記

tokyokid の書評・論評・日記などの記事を、主題に対する主観を明らかにしつつ、奥行きに富んだ内容のブログにしたい。

論評・羅府新報「磁針」コラム・氏姓考【091119掲載原稿】

tokyokid2009-12-04

題名・氏姓考
*   *   *   *   *
 人それぞれだろうが、自分の姓から先祖のルーツを考えることに興味を持つ人は少なくないだろう。本紙でも日系アメリカ人読者が主な対象と思われるが、あなたのルーツを探す、というキャンペーンを見たことがある。この場合日本の戸籍の記録は割合しっかりしているから、少なくとも明治期以降のルーツについては、容易かつ正確に調べることができるだろう。
 大多数の人は自分の祖父母までは記憶に留めている場合が多い。これで自分を含めて三代のルーツを遡ることができる。しかし四代前の「曾祖父母」ということになると、記憶に留めている人の数はずっと減るはずだ。一世代30年で計算すると、四代前は一二〇年前のことだから、現在の自分の年齢から起算しなければならないが、四代前の記憶は誰にでもあるというものではない。加えて半世紀ちょっと前に大戦争があって、人もたくさん死んだし記録も失われているから、記録や記憶が中断している。本紙のキャンペーンが成り立つ理由だ。
 個別的に見ると、日本の姓は二九万種類以上あるといわれる。これに対して(少なくとも部分的に)古くからの日本人のルーツとして考えられる隣の中国や朝鮮では、これがそれぞれ数百という単位だと聞いた。たとえば筆者の「木村」という姓は、日本で十六番目に多い姓で、古くから近江出身者が多い、という。江州は有史以来渡来人の多かったところとして知られているから、私の先祖も以前朝鮮半島経由で日本に来た人たちだったのかも知れない。ただし学説では、もともと日本列島には人は居らず、いずれにしてもどこからか渡来してきた人の末裔が私たち日本人で、考えられる太古の日本人の人種のルーツは(内陸部を含む)大陸北部から南部、さらには(いまのフィリッピンや遠くインド付近までも含む)南方民族も含まれるらしいということだから、必ずしも今の朝鮮民族と同じ先祖とは限らない。
 鎌倉・室町期以後は、とくに武士階級で自分の家柄にハクを付けるために「系図買い」ということが行われた。昔からカネをもらってその家の「誇るに足る」系図を作って売った人が多かったらしい。記録をすべて信じるわけには行かないのが難しいところだ。□
*   *   *   *   *