tokyokidの書評・論評・日記

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論評・羅府新報「磁針」コラム・川柳ざんまい【090108付掲載原稿】

tokyokid2009-01-19

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 日本では勝ち組と負け組に分かれていままで厚かった中流階級が極端に痩せ細り、ますます住み難いことになってきた。アメリカもテロ問題に最近のサブプライム問題が加わって、これまた住み難い国になってきた。二〇〇九年はどんな年になるだろうか。こうした暗い世相に放り込まれたとき、われわれ庶民は森羅万象を笑い飛ばすに限る。
 川柳は五七五の定型のなかに笑いを込めた文芸ということができるだろうが、江戸時代にこれを始めた柄井川柳の名をそのまま名前にとった珍しい事例である。俳句が季題だの切り字だの、とかく約束事にしばられるのに対して、川柳は話し言葉でおおらかに森羅万象を笑い飛ばす。古くは江戸時代の「柳多留」から最近の「サラリーマン川柳」まで、ご存じのとおりの賑やかさである。江戸時代の川柳でも、現代に通用する笑いがいくらでもある。岩波文庫の「柳多留名句選」から拾うと「雷を真似て腹掛けやっとさせ」「子ができて川の字形に寝る夫婦」「泣き泣きもうかとはくれぬ形見分」・・・などなど、平成のいまでも充分に楽しめる。
 川柳を読むのも楽しいが、自分でも作ってみると一段と興趣が増す。いい川柳をどうやって作るか、見方はいろいろあるだろう。とにかくわかりやすければいいということで駄じゃれだけではいわゆる間口は広くても奥行きのない句になるだろうし、色模様はいい句材であるとはいえ、あまりにも下品なものは読みづらい。やはり身の回りのことで、ほのぼのと読む人の共感を呼ぶものがいい。おかしくて、ちょっと考え込まされる句もいいのではないか。この本には川柳の四要素とは「こっけい」「うがち」「軽み」「諷刺」だとも書いてあった。
 本紙でも「パイオニア川柳」「羅新川柳」とふたつの欄があり、それぞれ投句の常連がついて毎月笑いを提供している。読んでただ面白いだけではなく、深い意味をたたえて考えさせる句もしばしば登場する。読者諸賢も憂さ晴らしに川柳作りはいかがであろうか。□
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