tokyokidの書評・論評・日記

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ルポ・有料老人ホーム体験宿泊記(その13)

tokyokid2008-12-19

13. 有料老人ホーム入居に関する、一日本人の考察
 古稀を過ぎているが日常健康に生活を送っている友人が、下記のアドバイスをくれた。当人はオリックスに勤務したことがある人である。有料老人ホームに関する見方など参考になると思うので、以下に連絡の内容を要約しておく。
<以下引用>
以下「老人ホーム」について私の意見です。
現在私は健康なのでかなり見当違いのことを述べるかもしれませんがあしからず。
1、一般に費用が高い、広告を見るとだいたい4〜5千万円の入居費が要るようであるが、老人ホームの場合いわばこれは入会費であって、部屋の使用権が確保されるだけで自分の所有にはなりません。であればアパート(日本ではマンションと言うが)を買うほうが自分の所有物になります(アパートは3千万円から買える)。病気になったら病院に通えばよい。しかも老人ホームは狭く、30平米以下の場合もあります。
2、老人ホームの広告には必ず”病院併設で病気のときは安心”と書いてあるが、現実は全然安心できません。病気になったら隣の病院を紹介するだけのことで、一般患者が通院するのと変りがありません。
3、完全看護を表示しているホームもあるが、多くは病気になると眠り薬を飲ませるだけです。現在日本では、病院の医者と看護婦が足らないと言われているときに、老人ホームだけが24時間医者や看護婦を待機させることはできないだろうと思います。
4、このような現実、特に値段のことからオリックスは数年前から老人ホーム事業を始めました。オリックスは価格を安くし、普通のサラリーマンがリタイアーした年金生活の人が利用できることを主眼におきました。入居金を1千万から2千万円ぐらいに押さえています。内容は現物をみていませんので分りませんが、インターネットで「オリックス、リビング、グッドタイミングリビング」で調べてみてください。従来の5千万円も1億もするものとは違います。
5、日本にはまだ本当に庶民が安心して入れる施設はありません。但し最近地方行政が力をいれてきましたので、自宅にいても派遣介護や日帰り介護施設が良くなってきましたから、上記「1」で述べたように自宅で派遣介護の利用でもかなりよくなっています。但しこれは都市によって差があります。ある人は半身不自由になって10年たちましたが、最近は東京・××区の施設を週4日利用しています。
6、関西方面でも海岸沿いに立派な老人ホームが出来たと報道されましたが、入会費だけで1億円などとバカな値段をつけています。このような施設はエントランス・ロビー、食堂、談話室などを豪華にして客をだましています。
7、老人ホーム入居での悪いことのひとつは、毎日付き合う人が限定され、共通の話題が病気と人が死んだ話ばかりになって、毎日の生活が暗い。人間は若い人とも交わって生活をすべきです。
<以上引用>
 筆者が付け加えるとすれば、老人ホームにおける「アクティビティ」の問題が上げられる。まず夫妻で有料老人ホームに入居したとしようか。都市型であれ風光明媚型であれ、入居してからじっと自室に閉じこもっているわけにはいかない。老人といえども、いや老人であるからとくに、生きがいになるようなことをしなければ、人間はとても生活していくことはできない。
 その点でもっとも充実しているのが前述の「ラグナウッズ市」である。ここには全部で七個所あるクラブハウスのなかに、それぞれ複数の劇場から集会所から水泳プールからはてはゴルフ場に至るまでの共同で使うスペースが大小とりまぜて完備している。こういうところでは、プロの公演から素人の発表会から教える人がきて開く講習会から、なんでもできる。さらに「アクティビティ」として国内外の旅行会、趣味の会・・・これは水泳、卓球、ダンス類、絵画、手芸、陶芸、木工、写真、貸し農園、乗馬など、およそ考えられるすべての趣味の同好会があり、活動していて誰でも参加できる。これらは入居者なら誰でも利用できるが、たとえば木工工場などは、ちょっとした専門の工場など顔負けの機械設備が整っている。
 次にアクティビティが盛んなのは KRH で、ここには専任の「アクティビティ・マネージャー」がいて活動全体を管理している。ここで毎月発行されるアクティビティの月間予定表を見ると、一年365日活動しているといっても差し支えないほどで、休みは元旦やクリスマス当日など数えるほどしかない。予定がびっしり埋まっているのである。これでは入居者は寝ているヒマなどなかろう。こうしてアメリカでは老人を「寝かしておかない」ことに最大の努力が払われる。寝ないで活動している人は元気な人であるから、それは当然のことだ。だが高齢者特有の健康問題、たとえば平たいじゅうたんの上でもつまづいて転ぶとか、食事のときにのどに食べ物を詰まらせるなどの事故に対しては、万全の準備がなされており、他方自立している高齢者に対しては余計な手出しはしないのが普通である。
 その点筆者が体験宿泊した(たった4個所だが)日本の「有料老人ホーム」でのアクティビティは、まず場所の確保ができていない。せまい日本のことであり、しかもしかも利益を上げねば存続できない民間資本であるから、共益スペースにそんなに資金を割けないということであろう。またアクティビティ活動そのものも概して低調のように見受けられた。要するに「やる人は自分で好きなことをやるが、施設としてはあまりカネも世話役も出さない」という感じが強かったような気がする。そのなかで「サンラポール南房総」は、郊外型で回りは山ばかり、という環境のせいもあってか、アクティビティがこのなかでは一番充実していた。まず「月間予定表」がぎっしり埋まっていた。それから施設の周りでは自前の「ロマンの森共和国」の設備を使えるようにしてあったし、また東京や最寄りの交通拠点である君津・木更津にも入居者が無料で使えるバス便があった。これを使えば、入居者は山の中に住んでいても、かなり自由に町を動き回ることができる。もちろん本人にそれだけの体力があればの話である。ここには貸し農園もあり、植物好きの人にはたまらない魅力だろう。同じことは書評で紹介した「シルバーヴィラ向山」の岩城祐子さんの本にも貸し農園やヤギなどの動物を飼っている話が載っていた。筆者も次回はぜひここの体験宿泊を実行せねばならないと思っている。
 いずれにしても自分が有料老人ホームを選ぶときには、「費用」「設備」「スタッフ」「食事」「日常生活の利便性」「まさかのときの対応能力」「そこに入居したら日常利用する(しなければならなくなる)病院・診療所などの医療施設」「モノの収納場所の有無」と並んで「アクティビティ」は外すことのできない最重要のチェック・ポイントである。□