tokyokidの書評・論評・日記

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ルポ・有料老人ホーム体験宿泊記(その10)

tokyokid2008-12-05

10. 有料老人ホームの日米費用比較
 上記の説明から、老人ホームの日米比較をしてみよう。比較の対象は、単に入居費用のみにとどめ、入居条件は問わないものとする。日本側の有料老人ホーム代表としてどちらかというと老人ホームというよりは不動産売買に偏っていると思われる「中銀ライフケア」を除いて、ネオ・サミット湯河原、サンリッチ三島、サンラポール南房総を選ぶ。それら3個所とアメリカ・カリフォルニア「KRH」の場合とを、一人入居・月額費用(入居費用には管理費と食費をともに含むものとする)の条件で比較してみると下記のようになる。
 ネオ・サミット湯河原は、入居一時金は1人2020〜4910万円であるから平均値の3465万円をとる。月額の管理費は1人7万8650円と食費の1人5万5500円で計13万4150円となる。
 サンリッチ三島は、入居一時金は1人2515〜8426万円であるから平均値の5470万円をとる。管理費は1人9万8700〜11万8440円であるからこれも平均値で10万8570円をとる。食費は1人3食30日分として1人5万2980円であるから計16万1550円となる。
 サンポール南房総は、施設の中で比較的安い価格の壱番館とそれよりは高価な弐番館があるので、べつべつに考察する。まず壱番館の場合、入居一時金は「壱番館」1人の場合1390〜2760万円であるから平均値の2075万円をとる。管理費月額は「壱番館」1人の場合5万9850〜8万2950円であるから平均値7万1400円をとる。食費月額は1人1日3食で30日提供した場合4万9140円であるから、計12万540円となる。
 サンポール南房総の「弐番館」1人の場合、入居一時金は2125〜4224万円であるから平均値3174万円をとる。管理費月額は「弐番館」1人の場合7万3500〜10万5000円であるから平均値8万9250円をとる。食費月額は「壱番館」と同じであり、1人1日3食で30日提供した場合4万9140円であるから、計13万8390円となる。
 カリフォルニアの敬老引退者ホーム(KRH)は、前述のごとく「入居金は不要」であるが、1ベッドルーム(日本でいう1LDK)で一人入居の場合、管理費と食費を含めて月額1860ドルを支払わねばならない。問題はこの現地通貨によるドル価格を円換算する場合、「ドル100円の為替レートを使うとすれば月額18万6000円ということになるが、仮に購買力平価による換算を「ドル200円」で行うとした場合、月額は37万2000円となる。永年アメリカに暮らした実感としては、このあたりが生活物価に即したまずは順当な円ドル換算値であろう。
 これらの数値から、それでは入居してから5年間にいくら払わねばならないのか、試算してみた(ここではすべて一人の場合で計算)。
・ ネオ・サミット湯河原の場合、入居時必要額3465万円+(13万4150円×60個月)=4269万9000円。
・ サンリッチ三島の場合、入居時必要額5470万円+(16万1550円×60個月)=6439万3000円。
・ サンラポール南房総「壱番館」の場合、入居時必要額2075万円+(12万540円×60個月)=2798万2400円。
・ サンラポール南房総「弐番館」の場合、入居時必要額3174万円+(13万8390円×60個月)=4004万3400円。
・ カリフォルニアのKRHをドル100円の為替レートで換算すると、(18万6000円×60個月)=1116万円ちょうどとなるが、これはあまりにも生活実感の物価を反映していないということで、これを前述のドル200円の購買力平価レートで換算すると倍額の2232万円となる。
・ 情報があとから入ってきたので後述せざるを得なくなった「オリックスグッドタイムリビング・香里ヶ丘」の場合、入居時必要額911万2500円+(21万7500円×60個月)=2216万2500円となる。
 上記の試算で、対象となる上記施設だけの費用を安い順に上げてみると、「KRH」「サンラポール南房総壱番館」「サンラポール南房総弐番館」「ネオ・サミット湯河原」「サンリッチ三島」の順となるが、前述したようにこれは費用だけの単純比較であり、費用と同様またはそれ以上に重要な意味を持つ部屋の広さや管理の状態や提供される食事の質・量や、また施設に働く人のサービス内容なども考慮に入れて費用対効果を算出するとなると、費用だけの単純比較とはまた異なる結果がでるかも知れないことを認識しておく必要がある。当然のことながら、カリフォルニアにある「KRH」は、日本居住の日本人にとっては、ビザ取得上の問題から実際上利用不可能であるので、ここでは単なる状況比較に留まる。これまた事情を正確に認識しておかねばならない。
 なおこの比較には、前述した「ラグナウッズ市」は含まれていない。理由は「この町は55歳以上でなければ居住は認められない」というルール以外、あとはふつうの住宅地に住むのとあまり変りはないからである。
 これらは主な費用の比較をしただけのもので、各施設で提供するサービスの内容とその費用などはそれぞれに異なる。したがってどこかに入居しようとするなら、この表にでてこないそれらの明細についても調査が必要となる。付言すれば、ロスアンジェルス市の「敬老引退者ホーム=KRH」には入居一時金という項目がない。入居者は入居したときからの「月額利用料」だけを払えばいいのである。1千万円単位の、巨額の入居一時金を払わねば入居できない日本の有料老人ホームとは、この点が大きく異なる。KRH がなぜ入居者から一時金を徴収しなくて済むのか、理由はふたつある。まず最初にこのKRHを作った人々が浄財を集めて、最初に建物等の施設を(入居者に負担させることなく)確保したこと、2番目はその後も日本人・日系アメリカ人を問わずコンスタントに毎年寄付を集めてまわって施設の維持費用にあてている、ということである。このために、KRHの入居者の負担は明らかに少なくて済むのである。KRH は日本でいえば民間の「特養」のような収入と費用のバランス、といえるのかも知れない。これに対して日本の「有料老人ホーム」はすべて民間企業の運営であるから、利益を生まなければ施設を維持していくことができない。この経営構造の違いが有料老人ホームと KRH の入居者の費用負担の差を生んでいるのである。□