tokyokidの書評・論評・日記

tokyokid の書評・論評・日記などの記事を、主題に対する主観を明らかにしつつ、奥行きに富んだ内容のブログにしたい。

ルポ・有料老人ホーム体験宿泊記(その2)

tokyokid2008-10-28

□有料老人ホーム体験宿泊記(その2)
2. 「幸せのある老人ホーム・岩城祐子著・扶桑社」
 有料老人ホームを探すに当ってインターネットで情報検索をしてみた話をしたが、じつはその前に関連する本を読もうと考えた。いまや日本は介護花盛りであって、この方面の出版物も数多く存在する。全部読むわけにもいかないので、自分で読むその種の本は一冊だけと決め、その一冊は自分のカンで決めることにした。たまたま新聞の本の広告欄でみた「幸せのある老人ホーム・岩城祐子著・扶桑社」をなんの作為もなく選んだ。著者の岩城祐子さんは大正13年東京生れ、華麗な勤務や自営の経歴ののちに昭和56(一九八一)年都市型有料老人ホームの草分けとなるシルバーヴィラ向山を東京・練馬に開設、そのあと「特養」をふくむ老人用施設を続々とつくってきた人なのだ。このように著者は老人ホームの経営者で、二〇〇七年にこの本を出版された時点では、これら老人ホーム群の経営を子息に譲られたあとだったそうだ。この本の内容は・・・・・
第一章・日本の高齢者はなかなかたいへんなのでございます
第二章・幸福な家のある暮らしを営む高齢者とは
第三章・幸福な逝き方のために
第四章・納得できる有料老人ホームを選ぶために
第五章・八十三歳、当然現役、まだまだやることが目白押しです
あとがき・・・・・
の各章からなる。このなかには、著者が実際に見た高齢者の「老いていく」経験のかずかずも語られている。題名をみただけでも参考になりそうな章のなかの項目を挙げると・・・・・
・ どんどん規模縮小する介護保険は、頼りになりません
・ 行政のすることを反面教師にやってまいりました
・ 「高い金を払って、親を老人ホームに入れる人はいない」
・ 自立と依存のはざまで、高齢者の心は揺れるのでございます
・ 昔ながらの介護にも、思わぬよさがございます
・ 育ての親のご遺体が冷えないうち、有価証券を探した養子様
・ 有料老人ホームで夫と過ごし、夫亡きあと独りで暮らす
・ 最愛の息子に知らせず、ひっそり最期を迎えたお客様
・ 風光明媚な避暑地にあるホームは、お年寄りには嬉しくありません
・ こんなところに注意した、賢く有料老人ホームを選ぶ
・ 月イチ就農は元気が出て食料も手に入り、いいことずくめでございます
・・・・・などの項目が並んでいる。実際に「老人ホーム」を見たことのなかった小生にとって「この本」は、高齢者にかかわる問題点を、まるごと目の前にさらけ出してくれた本であった。
 この本を読んでの印象を問われれば、ひとつは「行政はアテにならない」ということである。ならばどうするか。齢をとって身体のあちこちが故障するようになって、思考も若いときとはくらべものにならないほど狭く遅くなって、日常生活にも差し支えるようになって、なにごとによらず選択肢の幅がぐっとせまくなって、そのときの少なくなった選択肢のなかでなにを選択すべきか、それが問題になる。有料老人ホームが自分にとって選択肢のひとつになり得るかどうか、なるとすれば幾多のなかからどこを選ぶべきか。まずこの点を自分なりに明らかにせねばならない。そしてもし「有料老人ホーム」が、自分が求めている老後を過ごす場所として適当であると思えば、まだ身体を動かせるうちに情報収集をしておくことは、必須条件であろう。以下はランダムに選んだ四つの有料老人ホームの体験宿泊記である。どこも一泊しただけなので、体験したからといっても盲人が象を触ったのとあまり違いはないのかも知れない。でも体験しないよりもマシであったとも言える。以下ご紹介する有料老人ホームは、筆者が宿泊体験した物件ばかりであるが、記載の順序は泊まった順にした。□